あの頃言えなかったありがとうを、今なら君に
嫌いな同期に作る借りなど無い方がいいに決まっているのに、レンジの片付けを無理矢理手伝った盛岡は事もあろうにその自分のお弁当まで渡してきて。

「え、い、いらないわよ?」
「お前のより絶対美味しいぞ」
「失礼ね!?」
「残骸を見る限りお前の今日の弁当、白飯にゆで卵だけだろ」
「残骸言わないでよ」

言い方にカチンとしつつ、差し出されたままのお弁当に戸惑う。

“まさかこれ、受け取るまで永遠にこのまま⋯?”

「それにアンタのお弁当でしょ、盛岡はお昼どうすんのよ」
「俺は15時アポがあるからもう出なくちゃならないんだ、適当にコンビニでおにぎりでも食べながら運転する」
「えっ」

なんだかんだで電子レンジの片付けに30分はかかっていて。

“つ、つまり私の片付けのせいで盛岡はお弁当食べ損ねたってこと⋯!?”

レンジの爆発音は近くにいたからこそ大きく感じたが、来たのは盛岡だけだった。
ということは盛岡も給湯室、並びに電子レンジに用があったという訳で。

「ちょ、アンタがお弁当温められなかったのもお昼取る時間がなくなったのも全部私のせいじゃないの!?」
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