あの頃言えなかったありがとうを、今なら君に
その為軽くパウダーでベースを直しリップを塗り直すだけで接待に戻ろうとしたのだが⋯


「まだ戻るのはやめとけ」
「は?も、盛岡?」

何故か私を待ち構えていた盛岡に戸惑いを隠せない。

「え⋯、なんで?私はまだ⋯」
「見てたけどめちゃくちゃ飲んでるだろ、今平気でもいつグラッとくるかわかんねぇんだし、そもそもこれは正式な接待でもないんだから自分の席で大人しくしてろ」
「自分の席でって言われても⋯」

“宴会の間に行かなきゃ誰にもお酒注げないんですけど?”

少し苛立った様子の盛岡に、釣られて苛立ちつつ私は彼の脇を抜けて広間に戻ろうとして⋯


「ぅわっ!?」
「とりあえず外で時間潰すぞ」
「ちょっ、離しなさいよ!」

ガシッと腕を掴まれた。
そしてそのまま外に連れられそうになり、反射的にトイレのドアを掴み必死に抵抗する。

「私には!まだ!やることがあるの!」
「これは!仕事じゃ!ねぇから!30分くらい体休めてから戻れっつってんだ!」
「30分で何人に顔を売れると!?」
「30分で何杯飲まされると!?」
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