あの頃言えなかったありがとうを、今なら君に
「あー!山形さんいた!盛岡さんもいますね、今から二次会なんですけど⋯」
「えぇ、すぐ行ー⋯」
「でも盛岡さんには二次会酷ですよね、二人とも不参加と伝えておきます!」
「へっ!?な、なんで!?私は⋯」
「じゃあ彼氏の介抱、頑張ってくださいね~!」
「あ!ちょっと!!⋯え、えぇえ⋯」


内心笑っていた罰なのかなんなのか。
カップルとして定着してしまったせいで、しれっとグロッキーになっている盛岡を押し付けられてしまった。

“まだ顔売りたい人いたんだけど⋯!”

なんて不満に思いつつ⋯

「⋯でも、確かにコレ放置は出来ない⋯か」

青を通り越して土気色に染まりお水をちびちびしている盛岡を見て、今度は盛大にため息を吐いた。


“⋯ま、お節介だったとはいえ一応は私の為に飲んでたようなものだしね⋯”

仕方ないか、と諦め盛岡の荷物を抱えて彼に手を差し伸べると、戸惑いつつもそっと私の手を取って。


「すまん⋯」
「ま、盛岡にはお弁当の借りがあるからね。ここで少し返させて貰おうかなって思っただけよ」


なんて返事をした私はまだ気付いていなかった。
その「すまん」の意味を取り違えていた事を。

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