夢を追って、少女はオトナになる。

00 テガミ



久しぶりに便箋を出した。

小学生の頃はよく友達と本に挟んで手紙交換したっけな。

もちろん、好きな人にも書いたけど。

そんな恥ずかしいことはもう忘れた。



古い便箋は実家に置いてきたから、わざわざ自転車で30分かけて買いに行ってきた。

風が吹く度に桜が舞って、まるで結婚式みたい。

今では見栄を張って可愛い雑貨屋さんで、大人っぽいいちご柄の便箋を買えるようになったんだよ。

あの頃はレターセットなんて、100均じゃないと高くて買えなかったな。

このボールペンだって、私の名前が刻印されてる書き味抜群の貰い物。

3色で喜んでカチカチしてた、当時からは想像がつかない繰り出し式だよ。



---って、あの頃の私が今の私を見たら、びっくりして泣いちゃいそうだね。

自分でも、こんな最低な大人になるなんて思ってもいなかったよ。

あ、でも、まだ20歳じゃないから。早く大人になりたいな。



あれ、手紙ってこんなに緊張するんだ。

なかなか言葉にできないや。

君への想いはたくさん溢れてくるのに。

これじゃ配信者失格だな。もう違うけど。

とりあえず、書き出しは、



「背景、よく眠る君へ。

この手紙は眠らず読めていますか。」

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