花を手向けるということ。
学校が終わり、和服に着替えると……決まってわたしは花束を届けに行く。
祖父の昔からの友人の依頼で、定期的にとある場所へと向かうことになっている。
本来なら母や父が仕事で受け持つはずなのに、その人からの依頼だけは家族にとって”厄介者”のわたしへと投げられる。
「さぁ、今日も頼んだわよ。紡」
「はい、お母様」
部屋の扉の向こうから聞こえてきた母の声。
そこに置かれていたのは鮮やかな黄色いチューリップが三十ほど束ねられたもの。
引き戸を開けて外に出る。
こんなに天気が良く、桜でも見てゆっくりと過ごしたくなるような日に限って、どうしてこんな……と心の中で唱えては、小さくため息をついた。