女王様を愛したい
マリーゴールド
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放課後の学校の隅っこにある園芸部の花壇は、きっと生徒の誰にも存在を知られていない。
その花壇の前で、軍手をつけて花達に水を上げ、肥料をふる。
今にも燃え上がってしまいそうな程の暑さの中でも、力強く花を咲かせて魅せるマリーゴールド達も、きっとここの生徒達には知られることはないのだろう。
そう思うと可哀想だと思うと同時に、不思議と優越感も湧いてくる。
ーーごめんね。
「別に悲しくなんて、ないよね。あなた達のことは、私だけが知っておいてあげる」
そう、これっぽっちも悲しくなんてない。
悔しくなんてない。
マリーゴールドの花達は、こんなにも堂々と咲き誇っているのだから。
それを大切にしたいと思える私だけが知っていてあげるから、大丈夫だよ。
だけどーー。
本当の私を知ろうとしてくれる人が、学校には居ない。
「ありがとう……ごめんね……おはよ、う」
1人きりで呟いた台詞は、全て本当の私。
教室に居るみんなの前で、本当は1つ1つを紡ぎたい。
みんなと同じように。
周りに誰も居ない場所でさえ、こんな調子で情けなくなる。
人だらけの教室では、喉がきゅっと、まるで塞がってしまう様で何も言えなくなってしまう。
自身の情けなさに泣けてくる。
それをグッと堪えて、一輪のマリーゴールドを優しく突っつく。
「……また、明日ね」
ほら、ちゃんとすんなりと声が出る。
浅い深呼吸をして、教室へ戻ろうと体の向きを変えた。
「いつもここに居るよね」
「へっ、え、あっ!わ……!」