女王様を愛したい
私の側に、いつから居たのだろう。
驚きのあまり、体が跳ね上がる。
そして、お尻から地面に着地してしまった。
見上げると、男子生徒が私を見下げている。
私の心臓はドクドクと忙しなく騒いで、全く治まらない。
立ち上がることの出来ない私を心配そうに見ている彼も、私の目線の高さに合わせるようにしゃがみ込んだ。
「驚かせて、ごめん」
「う、ううん……」
「怪我してない?」
「うん……」
「立ち上がれそう?」
「うん……」
私の返事を聞いて、彼が先に立ち上がる。
そして、私に向けて、手を差し伸べた。
戸惑う私に「ん」とだけ言って、催促する彼の手に、そっと触れる。
ーー大きい……。
少しだけそう思ったら、すぐに引き上げられた。
「ご、ごめんね……」
「なんで? 謝るのは、驚かせた俺の方だよ」
違う。
こんなとき、私が言うべき言葉は、さっき練習した「あれ」だ。
「……ありがとう」
何故か「ごめん」よりも「ありがとう」を言うことの方が恥ずかしくて、うつむく。
ようやく花を相手にではなく、ちゃんとした人に向けて言えた。
それだけで、自分を褒めてあげたい。
ちょっとした達成感を噛み締める。
「別に、お礼言われるようなこともしてないけど」
「え……?」
彼の返しに一瞬、思考が止まる。
言葉の選択肢を間違えた?
「女王様って、可愛いね。思ってたのと、ちょっと違ったかも」