女王様を愛したい
「な、何、言って……」
「もっと冷たくあしらわれるのかと思ってたけど、めっちゃ可愛い」
さっきから言われ慣れない「可愛い」を、そんなに連呼されては混乱してしまう。
「や、止めて。気持ち悪い」
自分の口を出た後で、後悔する。
ーー今、私、なんてことを言ってしまったんだろう。
「ちっ、違う! そうじゃなくって」
「違うの?」
「え」
何故か私の方が、きょとんとさせられた。
「俺は気持ち悪いと思うよ。初めて喋る男子に、ぐいぐい来られたら。正直、引いてるでしょ」
「違う!」
「違うんだ?」
こんな失礼な私に対しても、大笑いしてくれる彼。
こんな人に出会ったのは、初めてなのに不覚にも胸が高鳴っている。
ちゃんと弁明したい。
自分のことを可愛いと思ったこともない私が、少しだけ喜んでしまっている、そんな自分が気持ち悪いと思うことを。
私が何かを言い出す前に、先を越されてしまった。
「俺、高嶺さんのこと、ずっと見てたんだ。綺麗な子だなって。あと、その女王様キャラも好きで、いつか支配されたーー
「気持ち悪い」
「ごめん、ごめんって! それは本気のヤツじゃん!」
前言撤回。
一瞬でも、ときめいた私が馬鹿だった。
彼を置いて、帰ろうとすると、手を握られた。