女王様を愛したい
「待って!」
振り返ると、必死な彼の表情から、目が離せなくなった。
「こんなこと言いたかった訳じゃないんだって」
「ちょっと、手、離して」
「嫌だ」
「嫌って……」
握る手が強く、だけど優しく、更に握られる。
その感触が、むず痒い。
「俺、B組の荒武。高嶺さんは俺のことなんて知らないだろうけど、俺は君のこと、ずっと気になってた。気になってただけだったんだけどーー
荒武くんは突然、言葉を詰まらせ、落ち着かない様子になった。
その雰囲気につられて、呼び掛けるのも何だか照れ臭い。
代わりに、手を握り返してみる。
すると、荒武くんの体がぴくりと揺れた。
「待って……。本当に可愛い、高嶺さん」
「荒武くんの趣味、疑うかも」
「もう疑ってくれても、何だって良いよ。やっぱり高嶺さんのこと、好きだわ……」
耳まで真っ赤に染め上げた荒武くんの色が、こちらにまで直に伝わってくるようで。
ーー何だろう、この気持ち。
「やっぱり、気持ち悪い」
女王様を愛したい
おわり。