トクベツにならないで〜独占欲の強い少女は人気アイドルになびかない〜

縮まる距離

***

昼休みに入ると知らせるチャイムが鳴り、クラスメイトは一斉に立ち上がる。

「んんっー………、はぁ。」

(久しぶりの授業、疲れたな。……でも今まで出来なかった事だからこんな疲れも嬉しい。)

俺が伸びをしてると安達と三田が近寄ってきた。

「……お前、一つ一つの仕草すべてがイケメンだな。女子大勢の視線を伸びだけで奪うだなんてっ!」

安達は揶揄うように俺の肩にもたれかかってくる。
重い………。

そういえば確かに視線が多い気がする。慣れてるからあまり気にしてなかったけど。

「全員目がハートになってる……。こわ。」

三田は本当に女子が苦手なようで自分を抱くようにして腕をさすっている。
……おもしろい顔になってるな。

「ふっ。三田、顔。」

思わず笑いが込み上げてきて肩を振るわせる。

「ぶはっ!」

安達も俺の声に吹き出した。
俺の肩が揺れてるからそこにもたれかかっている安達も小刻みに動いてるのがまた面白い。

「そんなに笑わなくてもいいじゃん。てか安達、めっちゃ揺れてる。……プッ」

「おうっ!なかなか楽しいぞー!」

安達は何故かドヤ顔で三田に話す。

「「ふっ、ははっ!」」

……楽しいな。小学校まではこうして友達と戯れたりしていたものだ。
中学一年の時スカウトされて事務所に入ってからデビューまでが二年……なかなか忙しくて学校には全然行けなかったし、行ったとしても話す奴もいなかった。
そんな俺にとって、こんな何気ない会話ややり取りがすごく新鮮だったりする。

「そろそろメシ食おうぜ。逢崎も購買行く?」

「ああ…行くけどちょっと先行ってて。」

「ん、分かった〜。」

安達と三田は二人で購買に向かった。

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