トクベツにならないで〜独占欲の強い少女は人気アイドルになびかない〜

……さっきからずっと類に頬をつつかれている。

無理矢理やめさせることもできるのだが、類が可愛いなんて言うから、タイミングを逃してしまった。

絶対に今顔赤くなってる。恥ずかしい……。

私は反射的に目を逸らし、やり過ごしていると、類がふと笑ったような声がした。

それは、さっき可愛いと言った時とは違う……。自虐を含んだ笑いだった気がして心配になる。

「類?」

「ん?どうしたの?」

「いや……なんでも。」

………気のせいかな。もし、私の予想が当たっていたとしても、理由は聞くべきではないだろう。

会ったばかりの私に話せることなんてないだろうし。

私は思考をやめて、未だ私の頬をつついている類に反抗する。

「………。」

「ああっ!行かないでー。」

体を起こして教室を出ようとする私に類が追いかけてくる。この人はプライバシーというものを知らないのだろうか。どこまでついて回るつもりなのか。

「ついてこないで。」

「やだ。」

廊下を歩きながら、横にいる類に文句を言うも笑顔で返された。その笑みに少し仄暗いものが含まれている気がするが……見間違いという事にしておこう。

「………。」

……無愛想な私といても楽しくないだろうに。物好きな人だなぁ。

「あ……。そういえばさ。昨日話してたアレ、やっぱ秘密?」

「アレって……。rainのこと?別に隠してないけど……。もっとも、話す人がいないからな……。」

友達もいないし。
rainとして活動し始めたのも家を出てからだから両親にも勿論伝えていない。まず連絡すらしてない。

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