トクベツにならないで〜独占欲の強い少女は人気アイドルになびかない〜
そう言うと自称アイドルの逢崎ってやつがキラキラと目を輝かせて近づいてきた。
……近い。
「ほんと!?やった!良かった…!いやぁ、もしグループ名すら知らないって言われたらただの自意識過剰な男になっちゃうって焦ったよー。」
自意識過剰は自覚あったんだ。
しかし、自意識過剰ぐらいでないとアイドルなんてやってられないだろうな。
いや、そんなことよりも近い。近すぎる。
少し前に体を傾けるだけで鼻と鼻がくっつくほどに。
「近いんですけど。」
「え?……っああっご、ごめん!!」
少し顔を赤くさせて、謝ってすぐに離れた彼は犬みたいだ。
最初凹んでた犬?が急にあんな目をキラキラさせてしっぽ振って(錯覚)また落ち込んでる。
垂れ下がった耳が見えたような気がした。
……ふふ、ほんと犬みたい。
「「「「…っ!」」」」
…ん?なんか息を呑む声が…。
周りを見ると教室にいたみんなが目を見開いてこちらを見ていた。
中には少しばかり顔が赤い人もいるような…。
逢崎も目をキラキラさせて見上げてくる。
「…一ノ瀬さん、笑った顔かわいいね!」
変な空気の中で逢崎が満面の笑顔で放った言葉に驚いた。
まあ、顔には出てないだろうけど。
「……私、…笑ってた?」
「…?うん。」
「……そう。」
…………久しぶりだな、笑ったの。
っていうか笑えたんだ、私。