トクベツにならないで〜独占欲の強い少女は人気アイドルになびかない〜

「おーい!類ー!こっちこっちー!」

三木さんが車の中から大きく手を振っている

「あっ、すいません、三木さん!ここにくる途中に囲まれちゃって…!」

「まだ時間あるし大丈夫!いやぁ〜人気アイドルは大変だなぁ」

「……ははは」

三木さんはよくこうやって茶化してくる
こんなお茶目な人だけど、本当に頼りになっていつも俺たちを支えてくれる 

「さぁ、乗って乗って!早く行かないと信用失うよ〜」

俺は三木さんの言葉にハッと我に返り、急いで車に乗る

乗り込むとゆっくり進み始める車。
その中で俺は隣の席の一ノ瀬綾那について考えていた。

「そういえば類、念願の女の子には会えたか?」

彼女のことを考えていた矢先にそのことを話かけられて答えるのが少し遅くなってしまった。

「……はい、一応…でも昔と様変わりしていて、びっくりしました」

彼女は本当に昔とは似ても似つかない。
クラスから孤立していて、俺に対しても面倒そうに話していた。
きっと俺が離れた後、何かあったのだろう
彼女が辛いときにそばにいられなかったのが悔しい。
もっと早くそばにいられていたら……。
いや、でも彼女はおれの事を忘れているようだった。

「……何かあったみたいだけど、彼女と話せてよかったな。最初、女の子に会うために学校に行きたいって言い出した時はびっくりしたけど。その後も行動が早かったし」

三木さんはまた茶化して笑う
…なんか恥ずかしい

「…ウチの事務所は恋愛OKだからいいじゃないですか。」

「ああ、でも活動には支障をきたさないでくれよ?今は大事な時期だからな。」

「…分かってますよ。」

……正直、もうアイドル活動は辞めてもいいと思っている。彼女に会うという目的は達成したから。
でも今まで本当にお世話になったグループのメンバーや三木さん、事務所に迷惑をかけるわけにはいかない。

「でも、仕事はつめすぎないでくださいね。オフの日は学校行きたいので。」

「分かってるよ。休みは大切だからなぁ。」

三木さんはミラー越しに俺を見て微笑んだ。

三木さんはいつも俺たちに親身になって接してくれるし、俺たちの意思も尊重してくれる。

俺は感謝も込めて笑みを返した

類side終わり


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