水曜日の恋人
水曜日の恋人
水曜日の恋人
水曜日が終わる時間。
いつも私は、満たされているようで満たされていない、寂しさによけい寂しさを重ねてしまったような。
美しい宝石を穴が空いた宝石箱にぎゅうぎゅうに詰め込んだような。
そんな仮初の幸せと重苦しい気持ちをなんとか誤魔化して眠りにつく。
そして眠りにつく前に念うのだ。
今日の私は笑顔で彼とお別れ出来ただろうか。
寂しそうな顔をしてしまってはいなかっただろうか。
きっと私が寂しそうな顔をしたらもうこの関係は終わってしまう。
終わらせられてしまう。
そして眠りに落ちる前に想うのだ。
夫への申し訳なさと虚しさ。
子どもへの罪悪感。
自分の愚かしさを。
彼は私と夫が別れることを望んでいない。
子どもから私を引き離そうとなんてしない。
私もそれを望むほどもう若くもないし、形は変わってしまったけれど、夫と息子への愛情がなくなったわけでもないのだ。
きっと夫が少しでも彼との関係を怪しんだら、そのまま彼は私の前から消えるだろう。
何事もなかったように。
そして日常に戻るのだろう。
私と彼が再会する前のように。
初めからなにもなかったかのように。
それが彼の優しさなのか、狡さなのかはわからない。
こんな関係が続くわけがない。
初めから終わりの見えている始まりをわかっていて、私は彼の手をとってしまったのだから。
だから水曜日の夜だけは彼を念って眠りにつくのだ。
だから水曜日の夜だけは家族に罪悪感を持って眠りに落ちるのだ。
ありがとう。
ごめんなさい。
さようなら。
また明日。
そんなオモイを胸に秘めて。