Magic
「捕まえた」

零に強く抱き締められ、琴葉の肩が震える。口からは小さく「やめてください。離して」という言葉が漏れるものの、零は気にしていないようで、琴葉の頰にキスを落とす。

「やっと君に会えた……。ずっとこの時を待ってたんだ。ラスベガスで初めて会った時からずっと、琴葉のことが好きだったんだ」

琴葉は思い出す。あの時、隣に座ってショーを見ていた男の子のこと。そして約束をしたことを。

「……一緒に、マジックをするって……」

「琴葉がステージに立つ?そんなの許さないよ。衣装を着た琴葉をいやらしい目で見る奴がいる。君はここにいたらいい。ここで僕のマジックを見てくれればいいんだ」

琴葉の頰を涙が伝う。その涙を零は指で優しく拭った後、琴葉の体をシーツの海に押し倒す。

「や、やだ!誰か!誰か助けて!」

琴葉は叫ぶものの、虚しく声が響くだけである。その様子を微笑みながら零は見つめた後、琴葉の唇を自身の唇で塞いだ。
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