Magic
「どうやって本を消したの〜?」

「いつかばんの中に移動させたんだよ?」

子どもたちは琴葉を取り囲んで質問するものの、当然琴葉は種明かしをするつもりはない。マジシャンは種を知られてしまっては終わりなのだ。

「内緒!」

琴葉が悪戯っ子のように笑いながら言うと、子どもたちからブーイングが上がる。しかし、それも夏休みの楽しいひと時だ。

「琴葉!またあんたはマジックばっかりやって!宿題は終わったの?あんた、受験生だってこと忘れてるんじゃないでしょうね?」

琴葉が次のマジックを披露しようとしていると、スイカを切って持って来た母に注意される。母の言葉に琴葉は頰を膨らませた。

「小学生じゃないんだから、ちゃんと宿題終わってるよ!それに大学受験とかする気ないし。あたしはマジシャンになりたいんだから」

「マジシャンなんて簡単になれるわけないでしょ!就職するならもっと安定した仕事がいいに決まってるじゃない!」
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