Magic
琴葉が箱の中に入ると、箱の蓋がしっかりと閉じられる。暗闇に包まれた箱の中、零の声が響いた。

「では、十秒数えていきたいと思います。十秒経つと箱の中に入ったお嬢さんは消えてしまいます。さあ、どうぞ皆さんご一緒に」

「十!」

「九!」

カウントダウンが始まる。琴葉は緊張と期待を覚えながら、暗闇の中、箱の中で手を伸ばす。箱は広くなく、すぐに手は箱に触れる。

(一体、どうやってあたしはこの箱の中から姿を消すんだろう……。箱には何の仕掛けもなさそうだけど)

「八!」

「七!」

カウントダウンは続く。それと同時に、何故か琴葉は強烈な眠気に襲われていった。緊張と興奮であくびの一つすら今日はしていない。

(何、これ……。すごく……すごく……眠い……)

琴葉の意識は遠のいていった。



「んぅ……」

意識がゆっくりと浮上していく。体の感覚全てが戻っていき、琴葉は目を開ける。

「ここって……」
< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop