転校から始まる逆ハーレム(本人に自覚なし)
叶視点
おれに姉ができた。初対面では前髪で顔が見えず、どこをみられてるかわからなかったので不安になった。そこでお得意の表の顔「僕」を使って話していくことにした。初対面だとなにを考えてるかわかりずらいから、可愛い子ぶっていた方がやばいやつにならなくていい。
この顔のせいで言い寄ってくる女が多くて女は苦手だ。一緒に暮らしたくない。とはいえ家族がギスギスしていると母さんも過ごしにくいだろう。そもそも家ではずっと「僕」だったし。猫をかぶってこれからも「僕」で話すことにした。
無防備に部屋に入れてくるから男好きかと疑った。あまり俺に近づこうとしないうえ、男が苦手だとわかって少し安心した。
そんな次の日の朝、物音がすると思ったら、姉ちゃんがご飯を作っていた。「いつも作っていた」という言葉が気掛かりだった俺は母さんに前までの姉ちゃんのことを何か知らないか聞いてみた。
母さんが義父となった高志さんから聞いた話によると、お父さんのために給食のある小学生の時から早起きをしてお弁当を作っていたこと、夜遅くに帰ってくると「洗濯はわたしがするからね。いつもお疲れ様」という書き置きを作って家事を終わらせて寝ていたこと、授業参観などに行けなくても笑って許していたこと、そんな生活でも文句一つ言ってこなかったこと…そんな家族思いで、未だにすごく気遣ってくる姉ちゃんが気になり、一緒にいたくなった。
姉ちゃんを好きになったと自覚するのはすぐだった。初めの態度で嫌われているかもしれないと不安になった俺が
「急に家族が増えてちょっと怖くなってて…ごめん」
と誤魔化しながら謝ると
「よかった〜可愛いところもあるんだね」
とすごく嬉しそうに言われた。今までで1番の笑顔だったと思う。多分姉ちゃんは弟っぽい俺に弱い。これからも「僕」で甘えていこう。
夏休みの終わり、俺はふと、姉ちゃんの顔をあまりみたことがないことに気がついた。整った唇や白い肌は見えるけれど目は見えたことがない。姉ちゃんの表情とかもみてみたいので前髪を切ってほしいとお願いすると髪を切ってくれた。でもこれは失敗だったかもしれない。ぱっちりとした二重に長いまつ毛。大きな瞳。整った形の鼻。何もつけていないのにツヤツヤした唇。柔らかそうな頬に白い肌。そこら辺のアイドルにも負けない可愛さだった。前髪を切らなければライバルを作らずに済んだかもしれないのに…姉ちゃんは関わるきっかけがあれば好きになれる性格をしていると思う。この顔だったら話しかける男がたくさん現れるかもしれない。すぐに姉ちゃんの魅力に気づく人が現れるだろう。やめとけばよかった…
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