あなたが好きだと言いたかった。
葵は近くの病院に搬送されました。 レイプされてもいたので精神的にはぐちゃぐちゃです。
「あいつら、、、。」 用事を済ませて病室へ飛び込んだ青山君は力無く眠っている葵ちゃんを見詰めたまま、、、。
「確かにさ、可愛いし、女らしくなってきたところだし、やりたくなるのも分かるよ。 でもこれじゃあ、あんまりだろう?」 死ななかっただけよかったとはいえ、、、。
時々、葵ちゃんは悪夢にうなされるように寝返りを繰り返しています。 「男性恐怖症とptsdが心配ですね。」
担当した医師も溜息を吐くばかり。 「しばらくはカウンセラーを付けましょう。 心理療法も必要です。」
母さんたちも将来を心配している様子。 青山君は野球を続けるかどうか悩んでいました。
「お前がそんなんじゃ葵は一生立ち直れないぞ。 お前が一生懸命に投げてる姿を見て、それに葵は励まされてきたんだ。 やれるとこまでやってみろ。」
父さんはそう言って病室を出ていきました。
今日は水曜日。 グラウンドでは部員たちが少しずつやる気を出してきました。
なんとかゴロを飛ばせるようになってきて、出塁率も上がってきたのです。 「青山のおかげだな。」
ピッチャーを任された木村も吉川直也も張り切っているようで、時にはとんでもない暴投をしますが、、、。
「おいおい、それは無いだろう? 何処に投げてるんだよ?」 「わりいな。 気合を入れ過ぎた。」
「程々にしろよ。 入れ過ぎたっていいことは無いんだからよ。」 優紀はそれを見ながらクスクス。
「見ろ。 優紀にまで笑われちゃったじゃないか。」 「ごめんなさーーい。」
「なんか雰囲気が変わってきたな。 これで打てるようになれば勝てるぞ。」 名志田先生も手ごたえを感じているようですね。 よかったよかった。
次の日、ホームルームでは、、、。 「青山もケガがだいぶ良くなったようだ。 来週からは来れるらしい。」
「先生、それってほんとですか?」 「ああ。 本人から聞いた。」
「ヤッホー。 これでまた優紀がキュンキュンできるなあ。」 「アホか お前は。」
「キュンキュンしてるのは勇気だけじゃないぞ。 真理だってそうだろう?」 「何で私よ?」
「そうか、、、お前は高林君だもんなあ。」 「グ、、、。」
「いいから静かにしろ。 青山が出てきても妹さんの話は絶対にするな。 入院してるんだから。」 「ほんとですか?」
「精神的に厳しい状態だ。 これだけは言っておく。」 担任はそう言って出ていきました。
「青山が戻ってくるのか。 野球部も頑張らなきゃな、、、。」 「特にお、ま、絵、が、な。」
「まあまあ、やめなさいよ。 ほらほら、授業に遅れちゃうわよ。」 「しまった! 宿題忘れてた!」
「またかよ。 何回目だ?」 「フルコンプだもんなあ。 山下。」
「だからやめなさいって言ってるでしょう? 分かんないのかなあ 君は?」 「分かりませんですーーーー。」
「終わってるわ。 死んでくれ。」 「ワーー、女子が俺に死んでくれだって。」
「言われて当然よね?」 「うわ、優紀まで、、、。」
どうしようもない仲間たちです。 でもこれで仲良くやってるつ、も、り。
数学の授業中も伝言ゲームをしてますねえ。 蟹田先生はそれを見ながら黒板に向かいます。
そして、、、。
『ばればれの伝言ゲームはしないこと。』
そう黒板に大きく書きました。 「誰がやってんだよ?」
「犯人捜しはいいから真面目に方程式を解け。」 睨まれた春山君はノートで顔を隠したんですけど、、、。
優紀は隣から回ってきたメモを机の中で開いてみました。
『青山君 好きなんでしょう? 帰ってきたらお祝いしようね。』
それを読んでクスクス笑っていると頭に教科書が、、、。 「いて!」
「だから、、、何度も言ってるが、バレバレな伝言ゲームは止めるように。」 「すいません。」
しゅんとした勇気を見ながら佐藤藍子が謝りました。 「お前もか。 次の試験はみんな赤点だなあ。」
「先生、そりゃねえよ。」 「次はこの問題だ。 xとyの値を求めなさい。」
そんなわけで数学の授業はみんな揃ってばつが悪い感じで終わってしまいました。 「あーあ、やっちまったなあ。」
「お前が悪いんだよ。 伝言ゲームなんて始めるから。」 「だってさあ、北村がメモを投げてくるんだもん。」
「俺かよ?」 「まあまあ、くだらないことばかりやってないで、たまには図書委員の仕事もしてよね。 北村君。」
「沢田さん ナイス!」 「調子に乗るな ボケ!」
「お互い様よねえ。 清水君。」 「ワーーーー、優紀にやられたあ。」
「いやいや、北村も清水もどうしようもないなあ。 これで2年生か?」 「2年生だよ。 何か?」
「ほらほら、また授業に遅れちゃうわよ。」 「やべえ、カメムシじゃないか。 また噴火するぞ。」
カメムシとは音楽の亀山敬之先生ですね。 だからカメムシなんだって、、、。
何というのかなあ、あだ名のセンスが三流なのよねえ。 優紀は音楽の教科書を見ながら青山君が歌っているところを想像しています。
「優紀、何ポカンとしてるんだ? 終わったぞ。」 「いけない、、、夢見てた。」
「どいつもこいつも締まって無いなあ。 きちんとしろよ。」 「どうやって?」
「まずはお前からだ。 北村。」 「また俺か、、、。」
「しょうがねえよ。 お前が一番目立ってるんだから。」 「よしなさいってば、、、。」
休み時間になるとみんなはまたまた言い合いを始めるんですが、、、。 優紀は一人きり、、、。
(青山君は大丈夫かな? 妹さんのことも気になるし、、、。) 青山君が登校してくるまで心配は続きそう。
あの声で「心配ないよ。」って言われたら泣いてしまうかも。 同級生たちはそんな優紀には目もくれず、、、。
6時間目が終わると賑やかにまた動き出しました。 「おい、鉄平。 今日は何をするんだ?」
「そうだなあ。 昼寝か。」 「今まで十分に寝てただろうがよ。」
「足りないよ。」 「それ寝過ぎだよ。」
「違わい。 寝足りないんだよ。」 「何時間寝たら気が済むんだ?」
「そうだなあ、、、15時間くらいか。」 「しょうがねえやつだなあ。」
「おーい、野球部はさっさとグラウンドへ行くぞーーーーー!」 「ほら来た。」
名志田先生もいつになく気合が入っているようですね。 「青山が居なくてもそれ相応に戦えるようにする。 ピッチャーは135キロくらいで投げれるように特訓する。 いいな!」
「えーーーーーー? 無理だよ無理無理。」 「無理だと思うなら帰ってもいいんだぞ。」 「やるやる。 やるよ。」
名志田先生の鬼のような噴火しそうな顔を見るとみんな真剣にならざるを得ません。 コーチもピッチングフォームの点検をし始めました。
「お前はシンカーが武器なんだからこうやってだなあ、、、。」 身振り手振りしながら、時には腕を捕まえて真剣です。
内野手には「とにかくゴロを抜かすんじゃねえぞ!」と監督も檄を飛ばしながら転がしています。
優勝校が見せてきたような早いゴロ、、、。 今まで取れなかったゴロをどんどん打ち込んできますねえ。
外野手も気が気ではありません。 バウンドがユレギュラーするボールを追いかけては汗だくです。
守備練習が終わるとみんな寄り集まって柔軟体操をします。 「練習の時は体操服でいい。 ユニフォームは試合まで着るなよ。」
そんなことまで言われたものだからみんなは必死です。 あれだけ冗談を言い合っていた部員たちが真剣な顔になってきました。
「優紀、みんなのスコアはどうだ?」 「だいぶ空振りが少なくなったようです。」
「やる気が出てきたのかな?」 「たぶん、、、。」
「何だ、、、まだ心配か?」 「他の高校はもう実践練習に入ってますから、、、。」
「うちはまだまだだよ。 幼稚園が小学校にやっと上がったんだ。 実戦なんてまだまだだなあ。」 「それじゃあ、大会には、、、。」
「青山が戻ってきたらレベルアップするよ。 あいつの影響力は大きいんだ。 今はやつが居ないからそれでみんなやる気を出したんだ。 もうすぐだよ。」 名志田先生もある程度の手ごたえは掴み始めているよう。
でもまだまだ不安な優紀なのです。
そんな月曜日、教室に入ってみると、、、。 「やあ、おはよう。 しんぱいさせちまったな。」
青山君が優紀に優しく声を掛けてきました。 いきなりだったからか、優紀は突っ立ったまま赤くなってしまいました。
「どうしたの?」 相変わらず青山君は怪訝そうに聞いてきます。
「いえ、、、何でも。」 「ありがとね。 心配してくれてたんだろう?」
「同級生だから、、、。」 それだけ言うのがやっとの優紀はさっさと椅子に座ると教科書に目を落としました。
(やっと出てこれるようになったんだ。 良かった。) 本当はす、き、なのにね。
「あいつら、、、。」 用事を済ませて病室へ飛び込んだ青山君は力無く眠っている葵ちゃんを見詰めたまま、、、。
「確かにさ、可愛いし、女らしくなってきたところだし、やりたくなるのも分かるよ。 でもこれじゃあ、あんまりだろう?」 死ななかっただけよかったとはいえ、、、。
時々、葵ちゃんは悪夢にうなされるように寝返りを繰り返しています。 「男性恐怖症とptsdが心配ですね。」
担当した医師も溜息を吐くばかり。 「しばらくはカウンセラーを付けましょう。 心理療法も必要です。」
母さんたちも将来を心配している様子。 青山君は野球を続けるかどうか悩んでいました。
「お前がそんなんじゃ葵は一生立ち直れないぞ。 お前が一生懸命に投げてる姿を見て、それに葵は励まされてきたんだ。 やれるとこまでやってみろ。」
父さんはそう言って病室を出ていきました。
今日は水曜日。 グラウンドでは部員たちが少しずつやる気を出してきました。
なんとかゴロを飛ばせるようになってきて、出塁率も上がってきたのです。 「青山のおかげだな。」
ピッチャーを任された木村も吉川直也も張り切っているようで、時にはとんでもない暴投をしますが、、、。
「おいおい、それは無いだろう? 何処に投げてるんだよ?」 「わりいな。 気合を入れ過ぎた。」
「程々にしろよ。 入れ過ぎたっていいことは無いんだからよ。」 優紀はそれを見ながらクスクス。
「見ろ。 優紀にまで笑われちゃったじゃないか。」 「ごめんなさーーい。」
「なんか雰囲気が変わってきたな。 これで打てるようになれば勝てるぞ。」 名志田先生も手ごたえを感じているようですね。 よかったよかった。
次の日、ホームルームでは、、、。 「青山もケガがだいぶ良くなったようだ。 来週からは来れるらしい。」
「先生、それってほんとですか?」 「ああ。 本人から聞いた。」
「ヤッホー。 これでまた優紀がキュンキュンできるなあ。」 「アホか お前は。」
「キュンキュンしてるのは勇気だけじゃないぞ。 真理だってそうだろう?」 「何で私よ?」
「そうか、、、お前は高林君だもんなあ。」 「グ、、、。」
「いいから静かにしろ。 青山が出てきても妹さんの話は絶対にするな。 入院してるんだから。」 「ほんとですか?」
「精神的に厳しい状態だ。 これだけは言っておく。」 担任はそう言って出ていきました。
「青山が戻ってくるのか。 野球部も頑張らなきゃな、、、。」 「特にお、ま、絵、が、な。」
「まあまあ、やめなさいよ。 ほらほら、授業に遅れちゃうわよ。」 「しまった! 宿題忘れてた!」
「またかよ。 何回目だ?」 「フルコンプだもんなあ。 山下。」
「だからやめなさいって言ってるでしょう? 分かんないのかなあ 君は?」 「分かりませんですーーーー。」
「終わってるわ。 死んでくれ。」 「ワーー、女子が俺に死んでくれだって。」
「言われて当然よね?」 「うわ、優紀まで、、、。」
どうしようもない仲間たちです。 でもこれで仲良くやってるつ、も、り。
数学の授業中も伝言ゲームをしてますねえ。 蟹田先生はそれを見ながら黒板に向かいます。
そして、、、。
『ばればれの伝言ゲームはしないこと。』
そう黒板に大きく書きました。 「誰がやってんだよ?」
「犯人捜しはいいから真面目に方程式を解け。」 睨まれた春山君はノートで顔を隠したんですけど、、、。
優紀は隣から回ってきたメモを机の中で開いてみました。
『青山君 好きなんでしょう? 帰ってきたらお祝いしようね。』
それを読んでクスクス笑っていると頭に教科書が、、、。 「いて!」
「だから、、、何度も言ってるが、バレバレな伝言ゲームは止めるように。」 「すいません。」
しゅんとした勇気を見ながら佐藤藍子が謝りました。 「お前もか。 次の試験はみんな赤点だなあ。」
「先生、そりゃねえよ。」 「次はこの問題だ。 xとyの値を求めなさい。」
そんなわけで数学の授業はみんな揃ってばつが悪い感じで終わってしまいました。 「あーあ、やっちまったなあ。」
「お前が悪いんだよ。 伝言ゲームなんて始めるから。」 「だってさあ、北村がメモを投げてくるんだもん。」
「俺かよ?」 「まあまあ、くだらないことばかりやってないで、たまには図書委員の仕事もしてよね。 北村君。」
「沢田さん ナイス!」 「調子に乗るな ボケ!」
「お互い様よねえ。 清水君。」 「ワーーーー、優紀にやられたあ。」
「いやいや、北村も清水もどうしようもないなあ。 これで2年生か?」 「2年生だよ。 何か?」
「ほらほら、また授業に遅れちゃうわよ。」 「やべえ、カメムシじゃないか。 また噴火するぞ。」
カメムシとは音楽の亀山敬之先生ですね。 だからカメムシなんだって、、、。
何というのかなあ、あだ名のセンスが三流なのよねえ。 優紀は音楽の教科書を見ながら青山君が歌っているところを想像しています。
「優紀、何ポカンとしてるんだ? 終わったぞ。」 「いけない、、、夢見てた。」
「どいつもこいつも締まって無いなあ。 きちんとしろよ。」 「どうやって?」
「まずはお前からだ。 北村。」 「また俺か、、、。」
「しょうがねえよ。 お前が一番目立ってるんだから。」 「よしなさいってば、、、。」
休み時間になるとみんなはまたまた言い合いを始めるんですが、、、。 優紀は一人きり、、、。
(青山君は大丈夫かな? 妹さんのことも気になるし、、、。) 青山君が登校してくるまで心配は続きそう。
あの声で「心配ないよ。」って言われたら泣いてしまうかも。 同級生たちはそんな優紀には目もくれず、、、。
6時間目が終わると賑やかにまた動き出しました。 「おい、鉄平。 今日は何をするんだ?」
「そうだなあ。 昼寝か。」 「今まで十分に寝てただろうがよ。」
「足りないよ。」 「それ寝過ぎだよ。」
「違わい。 寝足りないんだよ。」 「何時間寝たら気が済むんだ?」
「そうだなあ、、、15時間くらいか。」 「しょうがねえやつだなあ。」
「おーい、野球部はさっさとグラウンドへ行くぞーーーーー!」 「ほら来た。」
名志田先生もいつになく気合が入っているようですね。 「青山が居なくてもそれ相応に戦えるようにする。 ピッチャーは135キロくらいで投げれるように特訓する。 いいな!」
「えーーーーーー? 無理だよ無理無理。」 「無理だと思うなら帰ってもいいんだぞ。」 「やるやる。 やるよ。」
名志田先生の鬼のような噴火しそうな顔を見るとみんな真剣にならざるを得ません。 コーチもピッチングフォームの点検をし始めました。
「お前はシンカーが武器なんだからこうやってだなあ、、、。」 身振り手振りしながら、時には腕を捕まえて真剣です。
内野手には「とにかくゴロを抜かすんじゃねえぞ!」と監督も檄を飛ばしながら転がしています。
優勝校が見せてきたような早いゴロ、、、。 今まで取れなかったゴロをどんどん打ち込んできますねえ。
外野手も気が気ではありません。 バウンドがユレギュラーするボールを追いかけては汗だくです。
守備練習が終わるとみんな寄り集まって柔軟体操をします。 「練習の時は体操服でいい。 ユニフォームは試合まで着るなよ。」
そんなことまで言われたものだからみんなは必死です。 あれだけ冗談を言い合っていた部員たちが真剣な顔になってきました。
「優紀、みんなのスコアはどうだ?」 「だいぶ空振りが少なくなったようです。」
「やる気が出てきたのかな?」 「たぶん、、、。」
「何だ、、、まだ心配か?」 「他の高校はもう実践練習に入ってますから、、、。」
「うちはまだまだだよ。 幼稚園が小学校にやっと上がったんだ。 実戦なんてまだまだだなあ。」 「それじゃあ、大会には、、、。」
「青山が戻ってきたらレベルアップするよ。 あいつの影響力は大きいんだ。 今はやつが居ないからそれでみんなやる気を出したんだ。 もうすぐだよ。」 名志田先生もある程度の手ごたえは掴み始めているよう。
でもまだまだ不安な優紀なのです。
そんな月曜日、教室に入ってみると、、、。 「やあ、おはよう。 しんぱいさせちまったな。」
青山君が優紀に優しく声を掛けてきました。 いきなりだったからか、優紀は突っ立ったまま赤くなってしまいました。
「どうしたの?」 相変わらず青山君は怪訝そうに聞いてきます。
「いえ、、、何でも。」 「ありがとね。 心配してくれてたんだろう?」
「同級生だから、、、。」 それだけ言うのがやっとの優紀はさっさと椅子に座ると教科書に目を落としました。
(やっと出てこれるようになったんだ。 良かった。) 本当はす、き、なのにね。