音が好き
 三人で話をすること十数分。


ぎぃ……、

 ホールの扉が開く音がし、現れたのは……、

「あっ音だ! おーい、音〜〜! 」

私の好きな人。


果子さんが大きく手を振り呼びかけると、音くんはこっちにやってきた。

スーツに革靴で、いつもの何倍もかっこよく見える。


「久しぶりだな! 音。今、遥花と雅で話してたんだ。あっ雅ってのは、僕の同級生! 」

「お久しぶりです、果子さん。それと、雅さんも、初めまして。」

「よろしくね、音くん。」



 「ヘぇ〜〜、二人とも同じ中学に受かったんだな。よかったじゃん! 」

「そうですね。私は同じ小学校出身の子がいなかったので、とても心強かったです! 」

「そっか〜〜、で? 部活は? 音、お前何入ってんの? 」

「弦楽部です。」

「弦楽部? ……。ギターとか? あっ、琴? 三味線? それとm痛っ、何すんだよ雅! 」

「馬鹿か、お前は。そうだ、馬鹿だったわ。音くん、弦楽部って、ヴァイオリンとかチェロとか、そうゆうのだよね? 」

「あっはい。そうです。」


「音くんは、楽器何やってるの? 」

「僕はチェロを。はっはる……、遥花さんは、ヴァイオリンを。凄く綺麗に弾くんです。」

「へぇ〜〜、チェロを。てゆうか、遥花さんヴァイオリンやってるなら、さっき僕に言ってよ! 」

「いやいやいや! 恥ずかしくて言えないですよ。全然上手くないですから。」

「そうなの? 」

「そうなんです! 」


しばらく、四人での楽しい会話が続いた。



ぎぃ……。

また、扉が開く音がする。

すると、たぶんバスか電車に乗ってきた人たちが、ぞろぞろとホール内に入ってきた。


「やばっもうそろそろ行かないと。じゃあ、また後でね。果子さん、雅さん。」

「おうっ! 遥花と音のピアノは、僕がバッチリ聴いてるからな! 」

「「聴いてなくていいです!」」

「リラックスして楽しんで弾いてね。」

「はい! 果子さんのことをじゃがいもだと思って弾きますね! 」

「えっ何それ⁉︎ せいぜいにんじんにしてよ! 」

「いや、じゃがいももにんじんも同じだと思うよ、果子。」


そういえば、果子さんってにんじんが好きなんだっけ。そんなことを思いながら、私は舞台袖に向かった。

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