姉の婚約者はワルイ男
いつもは松葉さんと呼んでいるのに、絢斗さんってわたしが呼んだから。
こんなに喜んでくれるのも悪くないなと思った。
ただ、本人に向かってはまだ呼べないだろうなとも思う。
「絢斗ねえ、料理全くしないからときどきこうして食材持ってきてあげてるのよ。手がかかるでしょう?柚葉ちゃんも」
「料理ですか?最近はやってますよ。週に1回はですけどね」
「え?そうなの?あら本当だわ。冷蔵庫に珍しく食材が入ってる。しかもキッチンに調味料があるわね」
今までとは違うキッチンに驚いたのか、お母様が隅々までチェックするかのように眺めている。
余程信じられないみたいで、何度も見返している姿がとてもいい。
「それじゃあ、この食材は必要なかったわね」
「そう。だから早く帰って」
「えー、いいじゃない。もう少しいても。柚葉ちゃんともう少し仲良くなりたいわ」