姉の婚約者はワルイ男



「ゆず、大丈夫?」

「お姉ちゃん、何が?」

「だって……そのまま仕事行くつもり?」

「うん、そうだけど」

「手ぶらで?」

「え!?」


たまたまわたしは仕事、姉が休みの日の朝のことだった。

珍しく姉がわたしのことをじろじろと怪しむ目で見てくるかと思ったら、まさか仕事に行くのに何も持っていなかったとは。

急いで部屋にカバンを取りに行くと、呆れ顔の姉と目が合った。


「何してんのよ、ゆず」

「ちょっとカバン忘れてた」

「普通カバン忘れる?どれだけボケてるのよ」


姉にここまで言われても、わたしの頭の中は同窓会のことでいっぱいだった。

あれから不安で仕方がなくて、ここ最近はあらゆる場面で何かと抜けていることが多い。

姉に何度ツッコまれたかわからないくらいだ。


< 106 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop