姉の婚約者はワルイ男
姉の前でこんないちゃいちゃするようなマネ、すごく恥ずかしい。
すると、松葉さんは離れようとするわたしの手を強く握ってきた。
「ダーメ。離さないよ」
「なんでですか」
「今から柚葉ちゃんを拉致ろうと思ってね」
「なんでですか」
「さっきからそればっかりだね、柚葉ちゃん」
松葉さんは付き合ってからも、やっぱり意味がわからない人だ。
それに、わたしは何度松葉さんに拉致されればいいのだろう。
これで何度目だろうかと頭の中で思い返してみた。
「はい、柚葉ちゃん、乗って」
「……どこ行くんですか」
「どこって俺の家だけど」
「家に行くのは明日ですよね」
金曜日は今日はたまたまわたしは仕事だったけれど、普段は松葉さんが仕事でわたしだけが休みだから、金曜日に会うことはなかったのに。