姉の婚約者はワルイ男
第2章 ワルイ男の左手
わたしは昔から恋愛に疎かった。
告白をされた経験がないわけではなかったけれど、誰かを好きになった経験がほとんどない。
学生時代は彼氏なんて夢のまた夢だと思っていた。
社会人になって、高校の同級生と再会し、「好きだ」と告白されて付き合ったのは、歩くんが初めて。
彼はわたしが初めて付き合った男の人だった。
初めてこの人と付き合ったら幸せになれるんだろうなと思えた男の人。
だから、わたしはずっとこの手を取りたいと、そう思っている———