姉の婚約者はワルイ男
「うん、よく見たことなくて」
「……そうなんですね。あの、やっぱりあの人……」
まさか本当に知らなかったなんて。
まだ松葉さんからあの女の子のことを聞いてない。
手汗がさらに出てきて、緊張感が増した。
「柚葉ちゃんの想像通り、一緒に写っていたのはたぶん高校時代に付き合ってた人だよ」
「やっぱり」と言いかけて、その言葉をぐっと飲み込んだ。
問題なのはまだその先。
松葉さんはゆっくりとわたしを落ち着かせるように続けてくれた。
「でももうそれは10年も前の話だし、それに今度の同窓会にも来ないみたいだしね」
「え?そうなんですか?」
「うん。それにもし彼女が同窓会に参加するってなってたとしても問題ないでしょ」