姉の婚約者はワルイ男
本当は自分でも気づいていた。
わたし、ヤキモチ妬いてるんだって。
今までこんな気持ちになったことはなくて、戸惑うことばかり。
でも、ヤキモチを妬くってことは……
「ヤキモチ妬いてくれるってことは、柚葉ちゃん。相当、俺のこと好きだね」
その言葉に何も言い返せないのは、松葉さんに図星をつかれたから。
そのことに気づいている松葉さんは、満足げにわたしの頭をそっと撫でた。
「柚葉ちゃん、今度指輪買いに行こうか」
「え?」
「俺は柚葉ちゃんとしか結婚するつもりないからね。婚約指輪買いに行こう」
「こんにゃく……あ、こんやく」
「こんにゃくも買いに行ってもいいよ」
「からかわないでください。噛んだだけです」
すこーしだけ噛んだだけなのに、松葉さんはしばらく笑っていた。
今日の彼はとてもご機嫌かもしれない。
それに、いま……
婚約指輪って、松葉さん言った。
わたしたち、婚約するってこと……
イヤじゃないけど、こんなにさらっと流れるように言われて、驚く間もなかった。