姉の婚約者はワルイ男



「ゆずほちゃん、ゆずほちゃんはいつ結婚するんだい?」


槇原さんのおじいさんは嬉しさのあまりすぐに酔っぱらってしまったようで、わたしのことをずっと「ゆずほ」だと思っていた。

しかも、まだ結婚はしないと何度も言っているのに、この質問も何度目だろう。


「お父さん、酔いすぎですよ。ごめんね、柚葉ちゃん」


槇原さんのお母さんが代わりに謝ってきて、わたしは愛想笑いを返すだけで精いっぱいだった。

そして、松葉さんがトイレに立ったとき、話題が姉の婚約話に移った。


「あのとき、松葉さんとの婚約話がなくなって本当良かったですよ。そうじゃなかったら、今頃絃葉と一緒になれなかったかもしれないですもんね」


槇原さんがあのときのことをふと口にしたことがきっかけだった。

そう言えば、どうして婚約話がなしになったんだっけ。

確か、姉がそのときにはもう槇原さんと付き合っていたって言っていたけれど。


< 120 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop