姉の婚約者はワルイ男
「ねえ、おじいちゃん。どうして婚約話がなくなったの?」
「それはそのときにはもう絃葉が流星くんと付き合っていたからだよ」
「でも、それだけじゃないでしょ?」
このときの祖父も少しお酒が入って、だいぶ気持ちよくなっていた。
松葉さんから口止めをされていて、今までは何も教えてはくれなかったけれど、今だったら……
「それは、絢斗くんがこの婚約はなしにしてくれと頭を下げてきたからだよ」
わたしの思惑通り、祖父はすんなりと話してくれた。
「どうして、松葉さんがそんなことを?」
「なんだい、柚葉。絢斗くんから聞いていないのかい?柚葉のこと好きだから婚約はできないって言ってたから、もう知ってるものかと」
「え……」