姉の婚約者はワルイ男



初めて聞いた事実に驚いていると、「ちょっとおじいちゃん!」と姉が焦っている声が聞こえてくる。

やっぱりこのことだったんだ。

松葉さんが黙っていてほしいと言っていたことは。


でも、おかしい。

だって、姉と松葉さんの婚約話が上がったのはわたしが松葉さんと出会ったときだ。

初めて彼と会ったのは、姉の婚約者になる人だと初めて紹介されたとき。


どうして、松葉さんはわたしのことを好きだと言ったのだろう。

気になって、松葉さんが帰ってくるのも待てなかった。

そっと席を立って、廊下でウロウロしていると、トイレから帰って来た松葉さんと目が合った。


「どうしたの、ゆず。こんなところで」


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