姉の婚約者はワルイ男
これで観念してくれるかと思ったけれど、彼は断固としてなかなか口を割ろうとしない。
やっぱりとんでもない理由がありそうだ。
「じゃあ、時期だけね」
「はい」
「実はね、芝池さんと婚約話を持ち掛けられる1年前からゆずのこと知ってたんだよね」
「え?」
1年も前から———?
わたしたち、どこかで会ってたっけ?
「初めて会ったときからだよ、ゆずのこと好きなのは」
なんだか、2度目の告白をされているみたいだ。
みぞおち辺りがきゅーんとして、まっすぐに彼が見られない。
「松葉さん、わたしたち、いつどこで会ったんですか?」
「それは教えられないよ」
「なんでですか。教えてください、絢斗さん」
「その手はもうきかないよ」
やっぱり今度はもう教えてくれないみたい。
もう少しいけると思ったのにと、少し残念に思った。
すると彼が「思い出してみて」とわたしの手を握る。