姉の婚約者はワルイ男



無料体験という張り紙からやって来たのに、体験もせずにやって来た男を不審に思っただろう。

でも、俺はここで何かを得た気がしたんだ。

「ありがとう」と教室を出ると、「またいつでもご連絡ください」と笑顔を向けられた。


この日からだった。

仕事で辛いことがあるたびに、あの子もきっと頑張ってるんだから俺もとのと超えることができたのは。


ゆずの存在が支えになってくれていた。

こんなささいなきっかけが、俺にとってはとても大きなものだった。

俺はあの日からずっとゆずのことが忘れられずにいて———

でも、このときのだらしない俺を知られたくなくて、ゆずにはこの先もきっと言わないだろう、俺だけの思い出。




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