姉の婚約者はワルイ男
「絢斗さん、何考えてるんですか」
土曜日の夕方、うとうとしていると、目の前には普段はおろしている長い髪をひとつに束ねたゆずが、俺の顔を覗き込んでいた。
「んー、ゆずのこと考えてたに決まってんじゃん」
「そういうのはもういいですから」
こういう辛辣なゆずもたまらない。
でも、そのあとに「またやっちゃった」と後悔したような表情を浮かべるゆずも好きだ。
ほんとうに、かわいーな、俺の彼女は。
「絢斗さん、半分寝てましたよね」
「ちょっとね。それにしても、ゆずもようやくその呼び方が板についてきたね」
「そんなふうに言うなら、松葉さん呼びに変えますよ」
むっと口をとがらせながら、腕を広げて待つ俺の胸に飛び込んでくるゆずも、やっぱりたまらない。