姉の婚約者はワルイ男
そのあとも、アイスコーヒーもおごっていただいて、隣に座って楽しみだったミュージカル映画を見た。
姉の婚約者とその妹という、謎の組み合わせで。
今日のことは絶対姉に話せない。
姉の婚約者と2人で映画見たよなんて、口が裂けても言えやしない。
堂々と浮気しましたよと言っているようなものだ。
「いつまでついてくるんですか?松葉さん」
「んー?キミの家まで」
まさか送ってくれようとしているのか。
でも、それは少しまずいかもしれない。
だってもし家に帰宅した姉とたまたま鉢合わせてしまったら、いったいどんな言い訳をすればいいのだろう。
「なんでそんな苦い顔してんの?」
「そんな顔してないです」
「してるよ。またなんか難しいように考えてるんでしょ」
難しいもなにも、この男はこの状況に居心地の悪さを感じないのだろうか。
隣でのんきに鼻歌を歌っている男の足をけり倒してしまいたくなる。