姉の婚約者はワルイ男
「そんなこと考えてませんよ。だいたい松葉さんは……っ」
わたしの数百メートル先を歩く2人の男女。
その片方はわたしがよく知る人物だった。
「せんぱーい、ごめんなさい。お休みだったのにわざわざ」
「いや、とりあえず無事解決してよかったよ」
「先輩、優しいですね」
スーツを着こなして、仕事をこなす姿を初めて見た。
後輩と思われる女性と歩いているのは、彼氏の歩くんだった。
「もしかして、あの人がキミの彼氏?」
わたしの目線まで腰を下ろしたこの男は、興味深そうに前の2人を眺めていた。
「あの女性は後輩だよね。仲いいんだね、キミの彼氏とあの女性」
どうしてこの男は、ほかの人であれば言いにくいことでさえ口にしてしまうんだ。