姉の婚約者はワルイ男
そうだった。
この男は、わたしが歩くんと別れればいいと思ってる人だった。
「あの女性、キミの彼氏に気があるみたいだね」
そんなことこの男に言われる前に気づいてた。
さっきから歩くんの横にぴったりとくっついて、ボディータッチも多い。
本当に仕事中なのかと疑ってしまうほど。
「先輩、今からご飯行きましょうよ」
「うーん」
「行きましょうよ、わざわざ来てもらって私、申し訳なくて」
「じゃあ、会社に残ってた杉浦も誘って3人で行こう」
こんな2人の会話を最後に、十字路で曲がってしまった彼らの姿が見えなくなるのを、わたしはただじっと見つめていた。
自分でも驚いたんだ。
こんな感情を抱くなんて。
わたし、最低な彼女だ。
「ショック受けちゃった?柚葉ちゃん。彼氏に仲のいい女性がいて」
「別にそんなんじゃないです」
「素直になりなよ。ほら、俺の左手貸してあげるよ、キミのだしね」