姉の婚約者はワルイ男
「これを食べさせてあげたかったんだ」
ソファーに座るように促されながら、ローテーブルに置かれたのはケーキの箱だった。
「ケーキ……ですか?」
「そう。ここのケーキ女の子に人気あるんだって。好きでしょ?タルト」
確かにケーキは好きだ。
特にこういうタルト系のケーキは。
「好きですけど、またわたしの趣味をどこで……」
口からは文句ばかり出てしまうけれど、ケーキはありがたくいただこう。
だってこのケーキは行列に並ばないと買えないものだし、食べたことがないケーキでもあったから。
「もしかして並んでくれたんですか?あの行列」
「まーね。キミが元気出るかなと思ってね」
「それはありがとうございます」
「芝池さんにも柚葉ちゃんのことよろしくって頼まれてるしね」