姉の婚約者はワルイ男



「これを食べさせてあげたかったんだ」


ソファーに座るように促されながら、ローテーブルに置かれたのはケーキの箱だった。


「ケーキ……ですか?」

「そう。ここのケーキ女の子に人気あるんだって。好きでしょ?タルト」


確かにケーキは好きだ。

特にこういうタルト系のケーキは。


「好きですけど、またわたしの趣味をどこで……」


口からは文句ばかり出てしまうけれど、ケーキはありがたくいただこう。

だってこのケーキは行列に並ばないと買えないものだし、食べたことがないケーキでもあったから。


「もしかして並んでくれたんですか?あの行列」

「まーね。キミが元気出るかなと思ってね」

「それはありがとうございます」

「芝池さんにも柚葉ちゃんのことよろしくって頼まれてるしね」

< 29 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop