姉の婚約者はワルイ男
「……あー」
だからか。
姉からわたしのことを頼まれていたから、こんなに気にかけてくれるのか。
この前の映画館のことといい、今日のことといい、姉からのお願いだったってことね。
「じゃあ、ありがたくいただきます。家に帰ってゆっくり食べますね」
「あー、違う違う。違うよ、柚葉ちゃん」
「え?」
「そのケーキは今からここで俺と食べるんだよ」
「……え?」
このケーキはウチの家族用にくれたのかと思っていたら、そうではない?
まさか、松葉さんと2人分だったなんて。
「なに?いらないの?食べたくなくなっちゃった?」
「それは……いただきたいですけど。ぜひ」
「珍しく柚葉ちゃんが前のめりだね。これ買って正解だったな」