姉の婚約者はワルイ男



少し悪い気はしたけれど、ケーキの誘惑には勝てなかった。

ケーキを食べるだけ。

お姉ちゃんの婚約者……後に義理の兄となる人と仲良くしているだけ。


ただ、それだけ———

そう自分に言い聞かせて、何も考えないようにしながらケーキを頂いた。


「おいしかった?柚葉ちゃん」

「はい、ありがとうございました」

「そう。それならよかった。ところで……」


一瞬にしてあの男を取り巻く空気が変わった。

隣に座る男が真剣な顔で顔を覗き込んでくる。


「何か悩んでるでしょ、キミ」

「え?」

「話してごらんよ、柚葉ちゃん。俺の方が人生の先輩だからね。アドバイスできるかもしれないよ」

「人生の先輩って……たった3年しか変わらないじゃないですか」

「まあいいからいいから」


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