姉の婚約者はワルイ男



もしかしてさっきのケーキは口実で、この話をさせるための賄賂だったんじゃないかと思った。

話したくないけど、ケーキ食べちゃったしな。

ケーキを食べたという事実と、この男の視線という圧力に負けて、渋々重い口を開いた。


「ちょっと彼氏のことで」

「やっぱりね。そんなことだと思ったよ。この前のことでしょ」

「はい……」

「なるほどね。この前の彼氏とその後輩の彼女を見てショックだったんでしょ」


明らかに歩くんに気がある彼女。

職場が同じでわたしよりも確実に歩くんと一緒にいる時間が長い。

遠目から見てもふんわりとした印象のかわいらしい女性だとわかった。

そんな彼女が彼氏の近くにいるなんて、焦らないはずがない。

あんな場面を見たらショックを受けるにちがいない。


それなのに———


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