姉の婚約者はワルイ男
「いらっしゃい、柚ちゃん」
「お邪魔します、歩くん」
ある決意のもと、わたしは歩くんの家へとやって来た。
この1年、歩くんとのデートはお家デートが多かった。
ここで何回一緒に過ごしたことだろう。
「柚ちゃん、大事な話があるって言ってたよね?」
「うん……」
事前にラインで大事な話があるから、家にお邪魔したいと数日前に連絡を入れておいた。
あれから直接会うことも避けていたし、歩くんもなんとなく察しているのかもしれない。
「あのね、歩くん」
「うん、ゆっくりでいいよ」
付き合ってからのことは未知数のわたしにとって、どのように切り出したらよいかわからない。
でも、歩くんは最後まで優しかった。
「別れてほしい」と告げたら、「なんとなくわかってたよ」と笑っていた。
「最近、避けられてるなあって感じてたしね」と続けた。