姉の婚約者はワルイ男
第5章 2つ目のウソ
「キミにお願いがあるんだけど」
次にあの男から連絡があったとき、唐突にこんな話をされた。
この男からのお願いなんて、悪い予感しかしなかったけれど、以前話を聞いてもらった借りがあるから聞かないわけにはいかない。
「なんですか?」
「珍しく柚葉ちゃんが一発で聞く気になってる」
「……切りますね」
「ウソウソ!ごめんって。聞いて、俺のお願い」
久しぶりに会話をした気がするけれど、やり取りが依然と全く変わらなくてそれが安心した。
「あのさ、次の日曜日なんだけど。キミの1日俺にくれない?」
キザな男みたいに言われて、さすがに電話を切ってしまいそうになった。
この男はわたしにこんなセリフをはいて、いったいどういうつもりなのだろうか。
姉だけでなくほかの女性にもこんなことを毎回言っているのかと思うと、悩ましい気分にもなってくる。