姉の婚約者はワルイ男
「あ、あの、松葉さん。どうしてホテルに……」
「ここでパーティーがあるんだよ」
「……パ、パーティー」
「なに、柚葉ちゃん。ホテルに連れ込まれて、俺に何かされちゃうと思っちゃった?」
イジワルそうに、そして楽しそうにこの男は笑う。
この男はわたしをからかうことを全力で楽しんでいる気がする。
「そんなこと思ってません!」
「大丈夫安心して。今は何もしないけど、柚葉ちゃんが望めばいつでも襲ってあげるよ」
「絶対望みませんから!」
この男は言っていい冗談と言ってはいけない冗談の区別もつかないのだろうか。
これは明らかにアウトだろう。
姉がいるのだから。
「冗談はここまでにして。ヴァイオリニストの内藤さんって知ってる?」
「もちろん知ってますよ。コンクールで何度も優勝してる有名な方ですよね」