姉の婚約者はワルイ男
こんな大きなパーティーは初めてで、少し居心地が悪かった。
この男はそんなわたしの気持ちに気づいていたのか、少しも間を開けることなく話題を振ってくれていた。
「松葉さんのところの!絢斗くんじゃないか」
パーティーの主役である内藤さんにお祝いの言葉を伝えに行ったあと、貫禄のある50代くらいの男性に松葉さんが呼び止められた。
見るからにどこかの企業のお偉いさんという感じのその人は、大きな声を響かせ周りの注目を集めている。
「長本さんじゃないですか。お久しぶりです」
「いやー、最近仕事頑張ってるそうじゃないか。お父さんからいろいろ話は聞いているよ」
おそらく松葉さんの会社関係のお偉いさんだろうけれど、こんなにかしこまっている姿は初めて見る。
普段よく見る格好と違ってスーツでも決めているし、普段のこの男の仕事姿を垣間見た気がした。
松葉さんじゃないみたい。
「こちらのお嬢さんは?恋人?婚約者かな?」