姉の婚約者はワルイ男



とりあえず隣で愛想よく笑顔を振りまいていると、視線がわたしに集まった。


「いえ、違いますよ。恋人でも婚約者でもありません」


本当のことだけれど、この男が言うと少し腹が立つ気がするのはなぜだろう。

恰幅のいい男性は驚いた表情をしているけれど、無理もない。

参加している人たちの同伴者はパートナーであることがほとんどだったから。


でもそれも仕方がない。

姉は仕事で来られなかったのだから。


「先日松葉さんにお会いしたとき、息子の絢斗くんにいい人ができたっていう話を聞いてから、その女性と来るかと思ったけど、どうやら違ったみたいだね」

「そんな話してたんですね。半分そうなんですけどね。残念ながら、婚約者はいませんよ」


この男の言葉を聞いて、男性よりも先に「え?」と無意識のうちに漏れていた。

わたしが驚いたことに、この男は不思議そうな表情を浮かべていたけれど、再び男性との会話が再開して、すぐに視線がそれた。


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