姉の婚約者はワルイ男
「すごく忙しないね、おじいちゃん」
「娘が初めて彼氏を連れてくるんだから、まあこんなもんだろうなあ。しかも初めて会う娘の彼氏だから、よく見せようと必死なんだろうよ」
「え?」
初めて会う……?
いったいどういうこと?
松葉さんとは会ったことあるはずなのに。
そんな疑問を抱いていると、あっという間に姉が彼を連れて家に帰って来た。
「はじめまして。絃葉さんとお付き合いさせていただいている槇原流星と申します」
「よく来てくれたね、絃葉から話は聞いているよ」
「あの、これよかったら。みなさん、甘いものが好きだと絃葉さんから聞いたもので」
わたし以外は笑顔で姉の連れてきた男性を迎えていた。
わたしだけだろうか、こんなに頭の中が混乱しているのは。
だって、姉が連れてきたのは男性にしては小柄で、眼鏡をかけていて、目がくりっとしているかわいい印象の人。
今日は姉が松葉さんを連れてくるはずだったのに。
松葉さんとは似ても似つかない人が、姉の隣で笑っている。