姉の婚約者はワルイ男
姉も何やら面白がっているようにも見えるし。
わたしと姉の婚約者である槇原さんだけ何もわかっていないようだった。
「頼みますから、柚葉ちゃんには言わないでくださいよ」
珍しくこの男が気まずそうに視線をそらしている。
それをわたしの家族がほほえましそうに見ていて。
どうしてわたしにだけ内緒なのだろう。
「柚葉ちゃん、そんなに恨めしそうに見ないでくれる?」
「じゃあ、何なのか教えてくれますか?」
「……」
この男が無言になるなんて、さらに珍しい。
しかも槇原さんは姉にこっそり耳打ちで教えてもらったようで、彼までほほえましそうに笑い始めたのだ。
この場でわけがわかっていないのは、わたしだけになり、さらにじとっと睨んでしまう。
「じゃあ、もう松葉さんからのお願い聞くのやめますね」