姉の婚約者はワルイ男



教えてくれないのなら、こっちも反撃に出るまで。

すると、慌てたように口を開いたその男が、半分中腰になってその光景がなんだかおかしかった。


「それは……困るけど。教えるのは……できない。どうしても」

「頑なに教えてくれなんですね。わたしの悪口ですか」

「俺が柚葉ちゃんの悪口言うわけないでしょ」

「でも教えてくれないなら、この前みたいなお願いは聞きませんからね」

「いーじゃん。パーティーに同伴してくれるくらい」


この男とこんなやり取りをしていると、突然母が「え!」と声を上げた。


「なに、柚葉。絢斗くんとパーティー出たの?」

「あ……」


そう言えば、家族には何も言っていなかった。

姉が知っているかわからなかったし、それで傷つけたらいけないと思ってあえて話さなかったんだ。

家に帰る前にこっそりと着替えて、松葉さんからもらったドレスを必死に隠ぺいしたのを覚えている。


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