姉の婚約者はワルイ男
「別に怒ってはない。けど、ムカついてはいる」
「怒ってるじゃないですか」
「だから、怒ってはない」
やっぱり声が怒ってる。
確かに教えてと言われていたけれど、それはわたしをからかう冗談だと思っていた。
言わなかっただけでこんなに機嫌が悪くなるなんて。
「早く教えてくれれば、デートに誘ってたのに」
「誰が誰にですか」
「俺が。柚葉ちゃんに」
「しませんよ、デート」
「するよ。また拉致るからいいし」
「それ犯罪ですからね」
こんな言い合いをしていると、母が「いつもこんなケンカみたいな感じなの、あなたたち」と呆れていた。
父は「仲がいいなー」とのんきにしているし、祖父はにこにこ笑顔を絶やさない。