姉の婚約者はワルイ男
第7章 ワルイ男と初めての
「わたし、松葉さんのことワルイ男だとずっと思ってたんですよね」
次にあの男に会ったときに、わたしがふと漏らしてしまったことだった。
「へえ。そうだよね。俺のこと芝池さんの婚約者だとずっと思ってたんだもんね」
「その言い方やめてもらっていいですか」
「そうだよね。婚約者いるのに柚葉ちゃんにいろいろちょっかい出して、俺ワルイ男だったんだね」
「だから誤解だったって言ってるじゃないですか」
いつまでも拗ねた様子を見せられると、さすがに面倒くさくなってくる。
今まではそうだったのに、今はそれほど嫌な気分にはならなかった。
「今まで俺のことワルイ男だと思ってたから、避けてた部分あるでしょ?もう避ける理由がないよね」
「それとこれとは話が別です」
「ということで、柚葉ちゃんをデートに誘いたいんだけど」
あれから変わったことが一つある。
この男がわたしのことを名前で呼ぶことが増えたこと。
以前は“キミ”と呼ばれることがほとんどで、ときどき名前呼びだった。
それが今では名前呼びが当たり前になってきている。