姉の婚約者はワルイ男



「どうして松葉さんはわたしに構うんですか?今まではお姉ちゃんの婚約者だから、わたしに構ってくれるんだと思ってましたけど」


それを除けば、この男がわたしに構う理由がわからない。

———違う。

わからないふりをしている、のかもしれない。


「どうしてだと思う?」

「わからないから聞いてるんです」

「俺、結構わかりやすいと思うんだけどね」

「知りません」

「本当は気づいてるんでしょ、柚葉ちゃん」


気づいていないと言ってしまえば、きっとこのまま変わらない関係でいられる。

兄妹のように、バカなことで言い合ってふざけ合える。

傷つけることも、傷つけられることもない。

わたしはどうしても楽な方を選んでしまうみたいだ。


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